財産を託された方の完全ガイド 受託者のやるべきこと

法律的な契約の実行から毎年の報告・税務まで。
ご家族の財産を守るための具体的な手続きを分かりやすく解説します。

家族間に「受託者(財産を管理する人)」として選ばれることは、
単に親の財産管理を手伝う「家族の助け合い」の延長線上にあるものではありません。

信託法という法律に則り、信託財産の「所有権者」として対外的に一切の責任を背負うことを意味します。他の親族とのトラブル防止や、親への損害賠償責任などを避けるためにも、法的な立場を正しく理解し、着実に実務を進めることが成功の第一歩となります。

受託者の7つの重要ステップ

01

「権利」と「責任」を正しく理解する

受託者は、法律上「信託財産の所有者」として行動します。そのため、銀行や取引先に対しては、あなたがその財産の正当な持ち主として振る舞うことになります。その強力な権限には、以下のような厳しいルールが伴います。

  • 管理・処分の権限: 契約で定められた範囲内で、財産の運用や不動産の売却ができます。
  • 忠実義務のルール: 常に「親(受益者)のため」に行動しなければならず、「自分の欲」で財産を利用したり、親の利益と衝突する取引は原則禁止されます(どうしても必要な場合は親族の同意等、厳しい条件があります)。
  • 注意深く管理する義務: 「他人の財産を預かっている」という自覚と責任が求められます。親の財産にうっかり損害を与えた場合、弁償しなければならないリスクもあります。
02

信託専用の口座開設と名義変更【契約直後】

契約書が完成した直後に行う、最も重要な実務です。

  • 信託口(しんたくぐち)口座の開設: まず、公証役場で作成した契約書を持って銀行へ行き、「〇〇信託受託者××」といった専用口座を開設します。これができないと信託はスタートしません。
  • 不動産の名義移転: 法務局で「信託登記」を行います。登記簿上のお父様(お母様)の名義を「受託者」であるあなたの名義へと変更する手続きです。
03

「自分の財布」と「親の財布」を絶対に分ける

受託者にとって最も怖いルールが「分別管理義務(自分の財産と混同させないこと)」です。受託者は自分の生活費の口座と、親の「信託口口座」を1円たりとも混ぜてはいけません。

  • 不動産の権利証などの重要書類も別々に保管します。
  • 火災保険の契約名義も「親」から「受託者」に変更するなど、実務的な切り替えが必要になります。面倒でもこの切り分けを徹底することが、親族間の無用な疑いを防ぐ最大の防衛策です。
04

毎年1回、帳簿を作り家族へ報告する

家族間の信頼を保ち、横領を疑われないために不可欠な作業です。

  • 帳簿の作成: 「いつ・何に・いくら使ったか」を記録し、領収書を保管します(家計簿レベルで構いません)。
  • 1年ごとの報告: 毎年1回、「財産状況報告書」(財産の増減一覧)を作成し、親や他の兄弟に提示します。これを怠ると、後で「親の金を使い込んだ」と大トラブルに発展するケースがあります。
05

税務署への報告(※条件あり)

信託をしているからといって特別な非課税制度があるわけではありません。
もし、実家やアパートから「年間3万円以上」の家賃収入等がある場合、受託者は毎年1月31日までに税務署へ「信託の計算書・合計表」という専用書類を提出しなければいけません。これを忘れると税務署から指導が入る可能性があるため、税理士のサポートを受けた方が安全です。

06

自分自身で行う「利益相反」に注意する

「自分も信託された不動産にタダで一緒に住みたい」「自分が経営している会社に、親のアパートを相場より安く貸したい」といった行動は、親(受益者)の利益を損なう「利益相反(りえきそうはん)」となり、法律で禁止されています。

どうしてもそのような取引が必要な場合は、「契約書に特別に許す条項を入れておく」「他の親族や受益者代理人の許可をもらう」など、高いハードルを越えなければなりません。

07

信託の「終了」と残った財産の引き継ぎ

通常、信託はお父様あるいはお母様が亡くなった時に終了します(契約内容によります)。

  • 信託が終わった後も、受託者には最後の仕事が残っています。「最終の計算報告書」を作り、家族の承認をもらうことです。
  • そして、契約で決めておいた「次の財産をもらう人(帰属権利者)」に対して、口座のお金や不動産の名義を遅滞なく引き渡す必要があります。ここまで完了して、初めて受託者の長い任務が終わります。

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受託者(ご家族)が負担なく安心して管理を続けられるよう、司法書士がお手伝いいたします。